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相続登記は必要か?
[相談]取り壊して売却するのに、登記が必要?
昨年12月に母が亡くなり、築50年を超える実家を相続しました。
もうかなり老朽化していることもあり、私はすでに持ち家もあるため、実家の建物は取り壊して土地だけを売却しようかと考えています。
相続登記が令和6年4月から義務化されると聞いたのですが、実家はその前に相続していますし、まだ相続登記はしていません。
この場合でも、実家の相続登記をする必要があるのでしょうか?
また、取り壊す予定の建物についても、相続登記が必要なのか気になっています。
[回答]登記不要(令和9年3月まで)
令和6年4月より前に相続した不動産も、相続登記の義務化の対象にはなります。
ただし、今回のように「建物を取り壊して売却を予定している場合」、建物についての相続登記は必ずしも行わなくても大丈夫です。
ただ、令和9年3月までに取り壊さなければ、義務化の対象になります。
詳細解説
1.相続登記の義務化について
令和6年4月からの改正により、不動産を相続した場合、相続登記を3年以内に行うことが義務となりました。対象となるケースは次の通りです。
- 相続や遺言による不動産の取得:相続または遺言により不動産を取得した人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請を行う必要があります。例えば、被相続人が亡くなり、その後に自分が相続人として不動産を取得したことを知った場合、この日が「取得を知った日」となり、そこから3年以内に登記をしなければなりません。
- 遺産分割協議が成立して不動産を取得した場合:相続人間で協議を行い、遺産分割協議書が作成され、特定の相続人が不動産を取得することが決まった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を申請する義務が発生します。
もしこれらの義務に違反し、登記を怠った場合、正当な理由がない限り10万円以下の過料(行政上の罰金)が課せられる可能性があります。
さらに、令和6年4月以前に相続した不動産もこの義務の対象となります。ただし、法施行日より3年間の猶予期間が設けられています。
このため、これらの不動産は、令和6年4月の施行から3年後の令和9年4月までに相続登記を完了させる必要があるということになります。
2.ご相談内容に対する回答
ご相談の場合、相続した建物は取り壊して売却予定のため、令和9年4月までの猶予期間内に解体が完了すれば、建物についての相続登記は必須ではありません。
相続登記が完了していない状態でも、建物の解体は可能です。
また、登記名義が被相続人(お母様)のままであっても、相続人(相談者様)であれば、建物がなくなったことを証明する「滅失登記」を行うことができます。
ただし、令和9年4月を過ぎても建物の取り壊しが完了しない場合は、相続登記が必要となります。
また、取り壊し後に残る土地を売却する場合には、土地に対する相続登記が必須となるため、申請期限に十分注意が必要です。
3.取り壊しと税金に関する注意点
建物を取り壊すと、土地に対する固定資産税の「住宅用地に対する課税標準の特例」が適用されなくなる可能性があります。
この特例は、住宅が建っている土地の固定資産税を大幅に軽減する制度で、通常の土地に比べて負担が少なくなるものです。
そのため、住宅を取り壊して更地にすると、固定資産税の負担が増える場合があります。
よって、「とりあえず建物だけ取り壊しておこう」という判断には慎重を期す必要があります。
また、相続によって取得した不動産を売却する場合、一定の条件を満たせば、譲渡所得税が軽減される「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」などの優遇措置が受けられる可能性があります。
この特例は、相続から3年以内に売却した場合などに適用されるため、建物の取り壊しを含め、最も有利になるタイミングを計画的に決めることが重要です。
まとめ
売却を検討される場合は、早めに税理士や司法書士に相談し、建物の取り壊し時期や土地売却の時期を見据えた計画を立てることをお勧めします。