減価償却費とは
そもそも減価償却とは、事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具など時の経過や使用により価値が減少する資産を減価償却資産といいます。
他方、土地や一定の美術品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。
(法人税法施行令13条、減価償却資産の範囲より)
そして使用可能期間が1年未満のものまたは取得価額が10万円未満のものは、その取得に要した金額の全額を業務の用に供した年分の必要経費とします。
この場合において費用と考え、資産には含まれません。
国税庁のホームページによる引用だと、このように定義されています。
詳しくは国税庁のホームページの参照をお願いします。
減価償却費の様々な適用について
本題に入りますが、減価償却の適用には様々なケースがあります。
経営者の方々や個人事業主の方々などは、事業用途で使う資産を会社、個人で所有しています。
会社の経理の方々や個人事業主の方などは、決算や確定申告の際、どの資産がどのくらいの期間、いつから、どのタイミングで減価償却するのか悩まれたことがあると思います。
これから実際にあった判例や裁決を元に紹介していきます。
①車両のケース
事業用途を目的として車両を購入し引き渡しを受けたが、不具合が発生した。
そのため購入元に確認してもらい、その結果不具合が認められたため回収された。その後数日経過し、再度車両の引き渡しを受けその後問題なく使用できている。
いつから減価償却を適用するのかと言うと、実際に使用した月からが減価償却の対象となる。
この場合においては再度引き渡されて、問題なく使用でき事業の用に供した月からとなる。
上記の過程の購入時もしくは取得時、不完全な状態での引き渡し時での減価償却は誤りである。
「事業の用に供した日」とは、一般的にはその減価償却資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するに至った日をいいます。(法人税法施行令59条1項より)
運送会社が運送業の用途に中古車を購入した例では、保安基準に適合するよう修理を完了し、問題なく自走できいつでも使用可能な車両で、道路運送車両法に規定される使用者変更登録を終えている。
ただし保安基準適合証の交付を受けてはいない。
この場合において減価償却は認められるのか、または認められないのかどちらでしょうか?
そもそも道路運送車両法62条および94条の5より、車検期限切れの場合は、継続検査を受けるまでまたは保安基準適合証等の交付を受けるまでは運行の用に供してはならないと規定されています。
今回の場合は車検切れの継続検査は該当せず、また保安基準適合証の交付は受けていません。よって事業の用に供したとは認められず、この裁決例では減価償却の損金算入は認められませんでした。
次は運送会社が新車を購入したケースです。
とある貨物運送業を営む法人が、事業目的に新しく運送用車両を購入した。
道路運送車両法に規定される新規登録を終え、車検証の交付を受けた。
しかし、購入の際の注文書によって購入先に委託した改造架装が完了しておらず、納車されていない。
このケースでも車体に不具合はなく自走できる車両ですが、改造架装が完了しておらず納車されていません。
従って手元になく実際に使用していません。
よって減価償却は認められないとの判断でした。
(法人税法施行令59条1項および法人税法施行令13条)
〈参考とした裁決例〉
・国税不服審判所昭和62年12月18日裁決 (裁決事例集34・57)
②工場等の機械装置のケース
とある会社が、事業目的に機械装置を購入した。
実際にその機械装置を使用したところ不具合が見つかった。
運転を停止し、再度調整を行い、官庁立会検査に合格し完全な形での引き渡しが翌期首となった。
車両の時と同様に購入時の契約書の内容によるが、基本的には不具合なく、完全に使用できる状態で事業の用に供した時から減価償却を行う。
少し難しい言い方をしますと、引き渡しの時期は目的物を瑕疵のない形で引き渡した時となるわけです。
今回の場合では、翌期首の完全な形で引き渡しを受け、実際に稼働した時からが減価償却開始の時と判断されました。
〈参考とした判例〉
・名古屋地裁平成3年10月30日判決 (判例時報1434・70)
・名古屋高裁平成4年10月29日判決 (税務訴訟資料193・382)
③賃貸用建物の減価償却について
とある会社が、賃借を目的として建物を購入した。
その物件は築年数が相当経過しており、外壁の一部は崩れ補修工事等は行なっていません。
そして、とてもすぐにお客様に賃借できる状態ではない。
そして賃借人募集の張り紙を物件に張ってはいるが、不動産仲介業者への募集依頼は行なっていません。
この建物を減価償却できるのかの判断は、この場合において減価償却は認められないということになりました。
今回の裁決では総合的に考慮すると、入居者の募集に消極的であり、いつでも使用できる状態でない(賃貸用として稼働し得る状態にない)ということで、減価償却は認められないとの判断でした。
〈参考とした裁決例〉
・国税不服審判所平成19年3月26日裁決 (沖裁(法) 平成18-4)
まとめ
以上3つの事例をあげましたがポイントとしては問題なく使用できる状態、かつ、実際にいつから使用したのかです。
賃借用の建物については特殊で、いつ入居者が現れるか分からないということもあり、実際に使用していなくても減価償却を認められる場合もあると考えます。