2024.06.09
所得税と個人住民税で1人当たり4万円の定額減税がいよいよ始まります。このうち、給与所得者への所得税の定額減税は、原則として、企業など源泉徴収義務者が6月1日以降に最初に支払う給与等に対する源泉徴収税額から定額減税額を控除する方法(月次減税)で行われます。
国会では先月、企業などが6月1日以降に支払う給与等に定額減税を反映しない場合、罰則があるのかという質問がありました。
これに対し、国税庁は税法上の罰則はないと回答しましたが、厚生労働省からは労働基準法上の罰則が適用される可能性があるとの回答がありました。
4月26日の衆議院財務金融委員会で、櫻井周議員が「源泉徴収義務者が定額減税を反映せずに6月の給与を支払った場合、所得税法上罰則はあるのか」と質問しました。
これに対し、国税庁の星屋和彦次長は「源泉徴収義務者が6月の定額減税を実施せず、年末調整に定額減税を先送りした場合、税法上の罰則は設けられていない」と回答しました。
しかし、同議員が厚生労働省に労働基準法上の罰則について質問したところ、増田嗣郎審議官は「労働基準法第24条第1項で、賃金は通貨で直接、労働者にその全額を支払わなければならないとされています。その例外として法令に別段の定めがある場合は、賃金の一部を控除して支払うことができるとされています。税法に基づき6月の給与での源泉徴収から定額減税をしなければならないとされている労働者に関して、これを先送りして年末調整で定額減税をすることは、6月の賃金から税法に定められた本来の源泉徴収額より過大な税額を控除することになると考えられます」と説明しました。
続けて、「このような過大な税額の控除は、労働基準法第24条第1項の例外の要件である法令に別段の定めがある場合には該当しないと評価されるため、同条違反になると考えられます。労働基準法第24条第1項違反の罰則は、同法第120条により30万円以下の罰金と定められています」と述べました。
定額減税の実施に当たって、罰則の有無だけを基準に対応を決めることはないと思いますが、企業などが月次減税を実施しない場合には、労働基準法上の罰則が適用される可能性があるため、適切な対応が求められます。
解説:1(概略)
所得税と個人住民税で、合計で1人当たり4万円の減税が始まります。
給与所得者の所得税に対する減税は、原則として、企業などの源泉徴収義務者が6月1日以降最初に支払う給与から減税額を差し引く方法で行います(これを月次減税と呼びます)。
先月の国会で、企業が6月1日以降に支払う給与に減税を反映させない場合に罰則があるかどうかが質問されたわけです。
国税庁は税法上の罰則はないと回答しましたが、厚生労働省は労働基準法上の罰則が適用される可能性があると回答しました。
解説:2
4月26日の衆議院財務金融委員会で、櫻井周議員が質問しました。
質問の内容は、企業が6月の給与に減税を反映させなかった場合、所得税法上の罰則があるかどうか。
国税庁の星屋和彦次長は、企業が6月の減税を実施せずに年末調整で対応した場合、税法上の罰則はないと回答しました。
ただ、同議員が厚労省に労働基準法上の罰則はあるのかと問いただしたところ、同省の増田嗣郎審議官は「労働基準法24条1項で、賃金は通貨で直接、労働者にその全額を支払わなければならないとされており、その例外として、法令に別段の定めがある場合は、賃金の一部を控除して支払うことができるとされている。この法令に別段の定めがある場合には、所得税法に基づく所得税の源泉徴収などが該当するが、税法に基づき6月の給与での源泉徴収から定額減税をしなければならないとされている労働者に関して、これを先送りして年末調整で定額減税をすることは、6月の賃金から税法に定められた本来の源泉徴収額より過大な税額を控除することになると考えられる」と説明したわけです。
つまり「別段の定め」に所得税法に基づく源泉徴収が含まれるが、6月の給与で減税を実施しない場合は、過剰な税額控除となり、労働基準法第24条第1項に違反する可能性があると述べたわけです。
労働基準法第24条第1項違反の罰則は、同法第120条により30万円以下の罰金が定められています。
解説:3(まとめ)
定額減税の実施に関して、罰則の有無だけを基準に対応を決めることはないのでしょうが、企業が月次減税を実施しない場合には労働基準法上の罰則が適用される可能性があるということになります。
事務手続きは大変かと思いますが、企業には適切な対応が求められそうです。
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