クラウドファンディングにより、法人が資金調達を行った場合においての税務上の処理は、どうなるのでしょうか?
この記事では、法人税と所得税をどのタイミングで計上すればいいか?消費税はどう取扱えばいいのか?
実際に企業の税務を担当している税理士が解説します。
目次
「寄附型」と「売買型」で違う税の取り扱い
クラウドファンディングは、返礼品の有無によって大きく2種類に分かれます。
- 寄附型(返礼品なし)
- 売買型(返礼品あり)
どちらのタイプのクラウドファンディングかによって、税金の仕訳・計上方法が変わってきます。
まずはあなたが実施したクラウドファンディングがどちらのタイプなのか?しっかり把握した上で税務処理を行いましょう。
今回は、法人が、クラウドファンディング (「寄附型」と「売買型」の方法)で資金調達をした場合を例に挙げます。
寄附型のクラウドファンディングとは?
寄附型のクラウドファンディングは、純粋にお店を応援するためのクラウドファンディングです。
支援者(資金提供者)に活動報告や感謝状を送るケースはあっても、返礼品は約束しません。
純粋な寄付に近いですね。
【法人税】あり
法人が資金を募った場合【受贈益】で計上してください。
計上のタイミングについては、期末までに資金の募集が終了し、入金も行われている場合は当期の収益になります。
< 仕訳 >
100の資金が集まり、10の手数料が差し引かれ、90が入金になったとすると。。。
現金 90/受贈益(不課税)100
手数料(課税)10 /
【消費税】なし
【受贈益】は課税対象外取引のため、消費税は【不課税】です。
なお、仲介業者への支払手数料は【課税仕入れ】になります。
※個人事業主の場合・・・
個人事業主には法人税がないため、クラウドファンディングで支払う税金は【所得税】になります。
所得税は収入金額に応じて課されるため、通常の売上と同様に支援してもらった金額を収入金額として計上してください。
なお、消費税は法人同様に不課税です。
売買型のクラウドファンディングとは?
売買型は、出資の見返りに返礼品(商品・サービス)の提供を行うクラウドファンディングです。
純粋な寄付という形ではなく、支援者はリターン(返礼品)目的で支援を行います。
【法人税】あり
受け入れた資金は、一旦【前受金】として計上します。
また、返礼品の商品・サービス代や人件費などは【費用】として計上できます。
もし返礼品が、商品券(利用期限付きの食事券等)の場合、商品券が使用された都度【売上】に振り替えてください。
< 仕訳 >
100の資金が集まり、100の商品券を発行。10の手数料が差し引かれ、90が入金になったとすると。。。
現金 90/前受金 100
手数料(課税)10/
<商品券が使用されたときの仕訳>
商品券40を受取り、40の売上があった場合
前受金 40/売上(課税)40
※商品券の利用期限が徒過(期限切れ)したら??
たとえば、食事券等の一部が、未使用のまま利用期限が到来してしまった場合、利用期限が過ぎた時点で【収益】へと【振替え】が必要です。
<利用期限が徒過したときの仕訳>
60の商品券について、利用期限が過ぎた場合
前受金 60/受贈益(不課税)60
利用期限が徒過したときの消費税について
消費税の取扱いは寄付型と同じ【不課税】です。
[未使用の部分がある=食事をしなかった]ということは、資金だけを提供してもらったことと同じになるためです。
※返礼品は支援者側(個人)にとって一時所得の扱いとなる
個人の支援者が法人に資金を提供した場合、返礼品は支援者の所得税の収入金額(一時所得)に含まれますのでご注意ください。(ただし、その年中の一時所得の収入金額の合計が50万円以下であれば課税されません)
【参考条文】
法基通2-1-39、消基通6-4-5, 9-1-22
法人税基本通達
(商品引換券等の発行に係る収益の帰属の時期)
2―1―39 法人が商品の引渡し又は役務の提供(以下2―1―39において「商品の引渡し等」という。)を約した証券等(以下2―1―39の2までにおいて「商品引換券等」という。)を発行するとともにその対価の支払を受ける場合における当該対価の額は、その商品の引渡し等(商品引換券等に係る商品の引渡し等を他の者が行うこととなっている場合における当該商品引換券等と引換えにする金銭の支払を含む。以下2―1―39において同じ。)に応じてその商品の引渡し等のあった日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが、その商品引換券等の発行の日(適格合併、適格分割又は適格現物出資(以下この章において「適格組織再編成」という。)により当該商品引換券等に係る契約の移転を受けたものである場合にあっては、当該移転をした法人が当該商品引換券等を発行した日)から10年が経過した日(同日前に次に掲げる事実が生じた場合には、当該事実が生じた日。2―1―39の2において「10年経過日等」という。)の属する事業年度終了の時において商品の引渡し等を完了していない商品引換券等がある場合には、当該商品引換券等に係る対価の額(2―1―39の2の適用を受けて益金の額に算入された部分の金額を除く。)を当該事業年度の益金の額に算入する。
(1) 法人が発行した商品引換券等をその発行に係る事業年度ごとに区分して管理しないこと又は管理しなくなったこと。
(2) その商品引換券等の有効期限が到来すること。
(3) 法人が継続して収益計上を行うこととしている基準に達したこと。
(注) 例えば、発行日から一定年数が経過したこと、商品引換券等の発行総数に占める2―2―11に規定する未引換券の数の割合が一定割合になったことその他の合理的に定められた基準のうち法人が予め定めたもの(会計処理方針その他のものによって明らかとなっているものに限る。)がこれに該当する。
消費税基本通達
(物品切手等の発行)
6―4―5 事業者が、法別表第一第4号ハ((物品切手等の譲渡))に規定する物品切手等を発行し、交付した場合において、その交付に係る相手先から収受する金品は、資産の譲渡等の対価に該当しない。
(物品切手等と引換給付する場合の譲渡等の時期)
9―1―22 物品切手等と引換えに物品の給付若しくは貸付け又は役務の提供(以下9―1―22において「物品の給付等」という。)を行う場合には、当該物品切手等が自ら発行したものであるか他の者が発行したものであるかにかかわらず、当該物品の給付等を行う時に当該物品の給付等に係る資産の譲渡等を行ったこととなるのであるから留意する。