以前、確定申告により税金が還付されるケースとして「医療費控除」という制度をご案内しました。
今回は、以前説明を省略していた医療費控除という制度の注意点についてお話させていただきます。
まず、前回のおさらいですが医療費控除を利用するにあたって、1年間で支払った医療費の合計が
一定の金額以上でなければなりません。
控除額の計算の際に一定の金額が差し引かれるため(一般的には10万円)、
最低でも医療費の合計がその金額を超えている必要があります。
ここで注意する点としては「1年間で支払った医療費」です。
これは文字通り 1月1日~12月31日の期間中に支払った医療費を意味しています。
入院を例に考えてみますと、長期の入院の場合、その治療が年をまたぐ場合も考えられます。
治療費をどのタイミングで支払うかにより、控除の対象となる年が変わってしまいます。
例えば、X1年12月に入院し翌X2年1月に退院するという例で考えてみます。
退院時にすべての支払を行う場合は、すべて翌X2年の医療費控除となります。
別のケースとして、X1年12月中に内金として一定の金額を支払っておき、翌X2年の退院時に差額
を支払う場合は、内金部分はX1年の医療費控除となり、差額は翌X2年の医療費控除となります。
内金ではなく、X1年12月の入院時に保証金として一定の金額を預けておき、翌X2年の退院時に
治療費の支払と相殺するという場合は、すべて翌X2年の医療費控除となります。
(あくまでX1年の 時点では預け金であり、相殺されているがX2年に支払が行われたと考えます。)
治療行為が行われた年で医療費控除を行うのではなく、医療費の支払が行われた年で医療費控除を
行うことになりますのでご注意ください。
上の例を踏まえたうえで、クレジットカードの利用について考えてみます。
例えばX1年12月の医療費の支払をクレジットカードで行った場合、カードの支払は翌X2年に行われます。
この場合の医療費控除も上のように考えた場合、実際に支払ったのは翌X2年なので翌X2年の医療費
控除となると思われそうですが、実際はX1年の医療費控除となります。
これは、翌X2年の支払はクレジット会社へ返済として支払われたものであり、
医療費自体はX1年にクレジット会社が支払を行っていることから、X1年の医療費として扱うことになります。
医療費控除を申告される方の所得状況が毎年変わらない場合、医療費控除がどちらの年で行われて
も大きな影響はありません。しかし、その方の所得が今年と来年とで大きく変わる場合は、
所得の多い年の医療費控除として使用できた方が還付される金額も多くなると予測できます。
その他の注意点として、医療費が年をまたぐ場合、
可能であればどちらかの年でまとめて支払いをしてしまうほうが良いと言えます。
控除を2年に分けてしまっては、それぞれの年で確定申告を行わなければなりませんし、
控除額の計算の 際に一定の金額(一般的には10万円)がそれぞれの年で差し引かれることになります。
年末のなにかと物入りな時期に医療費の負担がある場合、安易に翌年に支払うのではなく、
クレジットを利用してでも本年中に支払った方が良いのでは?と検討してみてはいかがでしょうか?
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